Fumihiko Nohira+URBANISTICA / T 047-463-9441/ arihon.f@gmail.com / funabashi-shi Chiba-ken

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​長期優良住宅の申請は、しない方がいい?

「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成21年6月4日に施行されました。この法律は、良質な住宅を建設し、大切に長く使っていくことで、これまでのスクラップ・アンド・ビルドで造られてきた住宅に社会資本としての価値を持たせることを目指すもので、一定の基準を満たした認定長期優良住宅は、税制面での優遇などを受けられます。

 

 そこで、大手の住宅メーカーでは、今ではこの長期優良住宅を売りに販売合戦を繰り広げている訳ですが、私共も含め多くの設計事務所では、殆どこの長期優良住宅を快く思っていないのではないでしょうか?

 

 結論から言えば、私の事務所でも長期優良住宅に規定されている性能に勝るとも劣らない住宅を造っていますが、長期優良住宅の申請をしない方がいい、という認識を持っています。

 

 その理由は、第一に、申請そのものが煩雑で、申請する為に揃えなければならない書類を作る費用を合わせると、税金等の優遇がそのまま吹っ飛んでしまうこと。

 

 第二に、長期優良住宅はその規定により、メンテナンスが義務化されている、ということです。家は、勿論、長く住んでゆくためにはメンテナンスは欠かせません。しかし、それが「義務」となり、その義務を怠ると罰則まであるのです。

​無駄な出費を強いられる規定内容

規定では、例えば「基礎・土台・床組などは5年毎に定期点検を行い、防蟻防腐処理を行なうこと」とされています。

 定期点検は行なうに越した事はありません。しかし、状態の有無に関わらず、防蟻防腐処理(施行面積20坪で約14万円)をしなければならないのです。

 

 農薬系の薬剤であれば、その防蟻効果が薄れてゆきますが、私の使っているホウ酸系の防蟻材はその効果が時間と共に薄れいてゆくものではありません。そうした事はおかまいなしに5年毎に無駄な出費を強いられてしまうのです。

 

 同じ様に、バルコニー防水は3年毎にトップコート吹き替え、外壁は12年で全面補修(100万円くらい)。雨樋は定期点検を経て7年毎の取り替え(15万円くらい)。配管設備は5年毎の定期点検を経て、20年で配管全部取り替え(50~60万円)となります。

 

 私の事務所の仕様では、雨樋はガルバリウム鋼板製のものとし、15年経っても殆ど問題なく使用されていますし、屋内の給水・給湯システムはサヤ管ヘッダー方式を採用し、給水管・給湯管には架橋ポリエチレン管という、半永久的に劣化しないと言われる素材を使っています。

 

 この様に、如何にメンテナンスを少なくする設計努力をしていても、時が来れば嫌でも補修・交換が求められてしまうのです。今後、もっと科学技術が発達して、素材の耐久年数がどんどん向上しても、この規定に縛られなくてはならないのでしょうか?

 

 住宅で使われている材料・部品等は、その家が建つ環境条件や、そこに住む人の生活の仕方によってもその劣化の度合いは随分違ってくるものです。そうしたことを無視して闇雲に更新時期を指定され、過大なメンテナンスの出費を強いられることには納得できないものがあります。

厳しい罰則

 さて、住宅メーカーは長期優良住宅の設計図書、申請書を作成すると共に「住宅履歴書」を作成します。「住宅履歴書」には家の全ての情報と、点検・メンテナンス時期とその方法、取替時期、予定工事費など全てを記載されています。

 

 その時、毎年の様にやってくる点検時期やメンテナンスの予定工事費を見てビックリしてしまうかも知れませんが、あなたはこの「住宅履歴書」通りに点検やメンテナンス工事を行い、住宅履歴情報として保存しておかなければなりません。

 

 関係諸官庁からその住宅履歴書の提出を求められた時に不備があったり、不実記載があったりすると、最高で30万円の罰金が課されてしまいます。

 さらに、メンテナンスを怠り、国土交通省から是正勧告を受け、従わなかった場合には、「建築確認」をも取り消されてしまうというのです。

 

 どこまで実効性のあるものなのかまだ分かりませんが、耐震偽装事件における行政の責任を問われて以来、殆ど行政が責任を回避できるように法改正されましたし、コンプライアンス(法令遵守)が叫ばれている昨今ですから、厳密に実施されるものと考えるべきです。

​長期優良住宅は人生最後のお荷物?

 さて、長期優良住宅はその品質が公に保証されているので、売る時にはこれまでの中古住宅と比べてずっと高く売れるのではないか、と思われるかもしれませんが、今後、この様な過重な義務が課されていることが認知されてゆくと、逆になかなか買い手が付かないのではないか、という懸念があります。

 それに、長期優良住宅は、売買や相続を行なう都度、所轄官庁の承認が必要になるのです。

 この様に、長期優良住宅はそれを手にした時から、人生最大のお荷物になってしまうのです。

 

 メンテナンス費用は年月が経つ程大きくなってゆきますから、やっとローンが終わって、定年後、細々と年金生活を、と思っている時期にこそ大きなメンテナンスの「義務」がのしかかリ、過大な出費を強いられてしまうのです。

 

 私が一番問題にしているのは、「自分の都合でメンテナンスできない」ということなのです。夢のマイホームを手にした瞬間から、ずっとそのマイホームのために「義務」を背負って生きてゆかなければならなくなる、それはローンだけで十分ではないでしょうか?